百色日記 百色日記 SANPO

百色なもの File.03 [2/2] 2018.03.30

ゆっくり歩いて
五感でみつける自然 後編

季節のさんぽ道 │ 奥井かおりさん

知ることが景色の解像度を上げる

もともと大学院では、どんぐりなどの木の実の研究をしていたそう。
「研究テーマは、どのように人が木の実を利用してきたか。それも遠い昔の話ではなくて、今でも身近に存在する木の実の利用状況を調べたんです。リサーチ先の淡路島で老若男女の島民の方たちにお話しを伺ったところ、50種類の木の実を使っていることが分かりました。食用だけじゃなくて、種を絞って油として利用するとかも含めて。って聞くと、意外な感じがするでしょ?そこから、私たちが自然との関わりを急激に失ってきているということに気づかされます。」
自然との関わり。それは、サバンナの荒野やアマゾンの奥地に行かなくても、本来はいつでも身近にあるものだという当たり前のことにハッとさせられます。
「身近な自然がすごく大事なんです。身近な自然を知ると変化に気づけるでしょ。今まで聞いたことのない鳥の声がする、とか。その変化に気づけると世界の見方が広がるんです。たとえば同じ道を歩いていても植物の勉強をしていたら、植物ばかりが目に入りますよね。そこだけ景色の解像度が上がる感じ。この前、地学の先生と歩いたら、駐車場のタイヤ止めの前で立ち止まって、材質を見ていたんですよ(笑)同じ道を歩いていても、みんな見ている景色が違うのっておもしろいですよね。」

「わからない」世界を楽しむ

奥井さんはさらに続けます。
「最近、美しさってなんだろうって思うんです。虫を気持ち悪いと思う人もいれば美しいと思う人もいるでしょ。これが美しいものだっていう絶対的なものがあるわけじゃない。でも、これだけは言えるんじゃないかな。自分にとって、何が美しいかをわかっているほうが楽しいって。」
さんぽ道を抜けると有馬富士公園内に入ります。丘を登れば、目的地の有馬富士自然学習センターです。最後に、奥井さんに今一番関心があることを聞いてみました。
「ここで働くようになって、いろんな縁で、虫や、石などさまざまな自然を知るようになって。それって、それぞれ違う分野のようですべてが関係し合っているんですよね。って言葉で言うのは簡単だけど。実際は意図せず、あ、これとこれがつながっていたんだねっていうのが、ふと分かる瞬間があるんです。それが興味深くて。自然って知っても知ってもわからないことばかり。でもわからないことの中にいることにワクワクするんです。」
奥井さんと一緒におさんぽした1時間。丘を抜け、振り返った景色はそれまでと少し違って見えた気がしました。

案内してくれた人

奥井かおり

大阪府出身。京都造形芸術大学情報デザイン学科を卒業後、広告代理店勤務を経てメルボルンにてガーデニングを学ぶ。帰国後、兵庫県立大学大学院(緑環境景観マネジメント研究科)修了。東京大学大学院での研究員を経て2016年より三田市有馬富士自然学習センターのコミュニケーターとして勤務。好きな植物は「カツラ」。

案内してくれた場所

歩いたさんぽ道(JR新三田駅から有馬富士公園まで)

キッピー山のラボ(三田市有馬富士自然学習センター)

開館時間:9:00~17:00
休館日:毎週月曜(月曜祝日の場合は翌日)、年末年始
兵庫県三田市福島1091-2(兵庫県立 有馬富士公園内)
JR新三田駅から徒歩 約30分
駐車場500台(無料)
[Facebook]https://www.facebook.com/kuwagata.tuyoshi/

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