百色日記 百色日記 SANPO

百色なひと File.04 [1/2] 2018.04.28

季節のごはんに祈りを込めて 前編

大塩あゆ美さん │ 料理家

出張料理「あゆみ食堂」 として、イベントや展示会などで季節ごとの旬の食材を使ったケータリングを行う大塩あゆ美さん。パワフルな語り口に、飾らない言葉づかい。そしておいしい食卓を作りたいというまっすぐな想い。まるであゆ美さんがつくったごはんを食べているかのように心がじんわり満たされていく…。そんな滋味溢れるお話を伺いました。

積極的に好きを伝えて繋がっていく

―生まれ育ちが伊豆の旅館?

数年前に閉めてしまいましたが、100人程度が宿泊できる大きめの旅館でした。そこで見てきた、旅館によくある「人が集まる場所のまんなかに料理がある」という光景が、私に影響を与えつづける原風景だと思います。同時に、小学生の頃から洋服が好きで、高校卒業後に上京し文化服装学院という服飾の専門学校に入りました。もうギャグみたいな話なんですけれど、パリコレのランウェイで最後にお辞儀するデザイナーの姿に憧れていたんですよね。そんな感じで入ったから、入学後2週間で「あ、これは無理だ」って(笑)洋服を作ることが心底好きならいいのですが、なんとなく洋服が好きなだけではとてもじゃないけれど続けられない厳しい世界。私は自分が没頭してそれしかできないということしか続かないタイプなのですが、残念ながら、洋服は「それ」じゃなかった。

 

―気づいたあと、学校生活は大変でしたか?

ずっと行きたいと思っていた学校をすぐに辞めるのはさすがに最低だろうと思って、なんとか頑張って卒業しました。でも、東京に出て専門学校で過ごした時間は全く無駄じゃなかった。授業の合間に、自分の興味がある場所へどんどん行くようになったんです。訪ねて行っては、気になる人には自分から声を掛ける。「自分が何者であるか」は関係なくて「あ、この人好きだ」って思ったら、そのまま好きだって伝える。私は写真が好きだったので、都内の写真ギャラリーに足しげく通っていました。写真を見れば見るほど、自分の頭の中にある想いを言語化しやすくなってきた気がします。ギャラリーでいろんな人と知り合って、仲良くなって、今でもお付き合いのある人、仕事の相談をしてくれる人はこの時からのつながりもたくさんあります。

驚くほど仕事を楽しむ師匠との出会い

―卒業後すぐ料理の道に?

いえ、最初はアパレルの販売員でした。これが大変で。上司が苦手なタイプの人で、似合ってないのにほめて商品をすすめるタイプだったんですよね。私はまったく合わなくて、来る日も来る日も怒られて。「おまえは売れない」って言われ続けると、さすがに頭に来てしまい「1カ月で売り上げトップになってから辞めてやる!」と奮起。だって、言われっぱなしは嫌じゃないですか。そしたら本当に売り上げトップになったんですよ(笑)それで満足して、スパッと販売員を辞めました。その後アルバイトを転々としていたときに、知り合いの紹介でのちに私の師匠となるフードデザイナーのたかはしよしこさんに出会ったんです。

 

―師匠は「エジプト塩」のたかはしよしこさん?

その時はまだ「エジプト塩」はつくってなかったんですけどね。たかはしさんは会ったことがないのに100メートル向こうにいてもその人だってわかるような、見るからにとても魅力的な人です。紹介されて、試しに1回手伝わせていただくことになって。それまで私にとって仕事ってキツイ、ツライというイメージしかなかったので、こんなに楽しそうに仕事をする人がいるんだな、とびっくりしました。それってとてもいいなあと、ある意味衝撃を受けました。料理は昔から好きだったし、仕事として続けられそうだと思えたので、そこから本格的にたかはしさんを手伝うことになりました。

迷ったらやらない。依頼されて即決した独立

―料理家になることがはっきり見えてきました?

当時の私は楽しく仕事をしたいだけで、料理家になりたいわけではなかったんです。でもある時、アーティストの友人から今度展示会をするから会期中に会場で食堂をやって欲しいと言われて。それまでもごはんをつくるのが好きで、よく自宅でつくっては友人たちを呼んでいたんですよね。誘ってくれたのはその友人のひとり。私に食堂を依頼してくれる人がいる。私のごはんにお金を払ってくれる人がいる。だったらやってみようと。そうと決めたら、たかはしさんが新たにつくるアトリエでの仕事もお断りして独立。ケータリングをメインに行う「あゆみ食堂」をスタートさせました。

 

―よく決断されましたね

逆に、迷ったらやらないって決めています。この時は今がそのタイミングだと思ったから。とはいえ独立したはいいものの、仕事が無くて、築地でアルバイトをしながら生活していました(笑)正式なお仕事が来はじめたのは、あゆみ食堂をはじめて1年半くらいたってから。最初の大仕事は師匠のたかはしさんから頼まれた仕事で、これができなかったら一生仕事が来ないかもというプレッシャーを感じながら、80人分のケータリングを用意。ドキドキしすぎて大変だったけれど、やり終えた時にはとても手ごたえを感じました。その後少しずつ仕事が増えてきて、今では大学での懇親会、展覧会のレセプションパーティ、個人のお宅のホームパーティーなどでもケータリングを提供しています。

INTERVIEWEE

大塩あゆ美 | 料理家

出張料理「あゆみ食堂」 として季節ごとの旬の食材を使ったケータリングを提供。楽しい食卓を作りたいと日々奮闘中。著書に「あゆみ食堂のお弁当 23人の手紙からうまれたレシピ」(文化出版局)

http://ayumi-shokudo.tumblr.com/

Instagram:@ayumishokudo

 

PLACE

リーダン・ディート

広島県広島市中区本川町2-6-10 和田ビル203

広島電鉄 本川町電停 徒歩1分

OPEN 11:00-19:00 火曜定休

http://readan-deat.com/

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