百色日記 百色日記 SANPO

百色なひと File.09 [3/3] 2019.05.22

「好き」を信じて、つながる、生きる 後編

曽我部 美加さん │ eb.a.gos

自分らしい人生を積み重ね、それぞれの色で花咲く女性たちを訪ねるシリーズ「百色なひと」。今回は徹底したこだわりと、たっぷりの愛情が詰め込まれたバッグを生み出し続ける「eb.a.gos」(エバゴス)の曽我部 美加さんを訪ねます。曽我部さんの考えかたやふるまいには、誰もが迷い、立ち止まるとき、一歩踏み出すきっかけをくれるようなヒントが満載です。後編はそんなお話をたっぷりと。

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(中編はこちら)
聞き手:新原 陽子 (SANPO CREATE/百色日記編集部)

ものづくりが好きな仲間と好きなものをつくる

―eb.a.gosにはどんな思いを込めて?

「誰に届けるか」とかは考えてなくて、とにかく自分が好きなものをつくっています。その「好き」が詰まっているバッグをお客さまに好きになって貰えばいいなって。eb.a.gosを始めたときもかっこいいコンセプトとか強い意志があったわけではなくて、「なんとかなるだろう」って、とりあえず自宅の一室でスタートを切った感じなんです。

 

―最初は大変だった?

創業資金が40万円くらいしかなかったんですよ。オーダーを取ってからはじめて通帳を見て「さあ、どうしたものか」って(苦笑)でも、続けていくうちにじわじわと「そうか、そうか!!」って、自分がやりたいことが分かってきて、だんだんその輪に入りたいひとたちが集まってきてくれて…という感じかな。

 

―曽我部さんにとって、eb.a.gosを一緒につくりたい仲間って?

一番はものづくりが好きだということ。ものづくりという才能は普段は隠れていることが多いんですよね。自分ではできないと思っていても、実はなにかをつくってみたらものすごく上手にできるひとっているでしょ。そういうひとの「ものづくりオーラ」を感じると、ぜひ一緒につくってみたいと思うんです。だから「自信がない」って言うひとには、むしろ「自信が無いなら、良かった」って伝えています。あとはやっぱり明るいのが一番。ネガティブはネガティブを呼んでしまうから。

 

無理せず、でもやると決めたらとことん

―eb.a.gosを続けるために心がけていることは?

「無理しない」ってことですね。みんな営業は苦手なので、こちらから営業しにいくのではなくて、お店から「置きたい」と思ってもらえるものを一生懸命つくる。実際、もういっぱいいっぱいな時は、無理なことは無理って言っちゃってます。でもここぞというときに直感が下りてきて、「さあ、やるぞ!」ってなったら、とことんやる。

 

―たしかに、eb.a.gosにはいつも徹底したこだわりを感じます。

いつもそばで支えてくれる妹からはよく「しつこい」って言われますね(苦笑)書籍『バッグ ヲ ツクル』の発表イベントのときも、こんなにこだわって展示するひとは見たことないって周りから驚かれました。でも、ちゃんと伝えるためには時間も手間もかかって当然。せっかく見にきてくださるお客さんのためにも、とことんやらないと納得できないから。

 

―毎回伺っている展示会も、本当に楽しくて。

eb.a.gosには直営店舗がないので、取り扱ってくださっているお店で売っていただく時に、展示会での空気感も一緒にお客さまに届けたいと思っているんです。嬉しいのは、展示会でお客さま同士、そのシーズンのテーマについて熱く語ってくださること。書籍『バッグ ヲ ツクル』の発表会では普段、直接会えないお客さまに会えたことがとっても嬉しかった。私は普段引きこもりだし、腰も重いし(笑)こういうことでもないとお客さまと会えなかったので、改めて本をつくってよかったなって思いました。

暮らしが楽しくなるバッグを届けたい

―どんなバッグをつくっていきたい?

持っていて楽しくなるバッグをつくりたいですね。持っていたらそのひとの暮らしが楽しくなるような。バッグを持つだけじゃなくて、バッグの中をみて見つける楽しみもこっそりたくさん仕込んでいるので、そこも楽しんでいただけたらと思っています。

 

―好きという気持ちが20年以上続けている秘訣なのでしょうか。

わたしの根本はとにかくバッグが「好き」だということ。バッグのことをずっと考えているし、自分たちでつくってきた、今の好き勝手できる状況をとても楽しんでいます。『バッグ ヲ ツクル』をつくるために、改めてeb.a.gosの歴史をふり返りました。デザインをするわたしと、チームのみんな。一緒になって研究しながら、あっという間の20年間だったと思います。

 

日々の小さな奇跡に気づけるように

―改めて、いままでを振り返ってみると?

昔の写真を見ていたら、すごく不思議な気分になって。願ったり、言葉にしたことがいつも叶ってきたんだなって。ちなみに私は、何かフシギなものの予兆を見つけた時も「あれ、なにかヘンだよ?」とか言葉にしてわざと騒いでみたり。そうやって言葉にすることで、小さな奇跡のような出来事にも気づける。願いを叶えるために、おまじないを掛けてみることも。実は、ここだけの話、自分でつくったおまじない用の振り付けもあるんです(笑)

 

―そんな曽我部さんの理想の女性像って?

カッコイイ女性が好きですね。パッと思い浮かぶのはダンサーのピナ・バウシュ。彼女のダンスをはじめて見たとき、そのなにもかもに感動。生まれてはじめてスタンディングオベーションをしたのもこのときです。彼女のようなクールなイメージは憧れの女性像としていつも心の中にいます。同業だと「アンティパスト」のデザイナーさんの人間性が好き。尊敬しています。あ、ちなみに妹は「姉が一番好き」って言ってくれますよ(笑)

【編集後記】
昔からこつこつ集めてきたeb.a.gos のバッグ。展示会でお会いするたびに、曽我部さんがかけてくださる言葉のひとつひとつを宝物のように受け取ってきました。今回改めて、じっくりお話を伺い、曽我部さんのことも、eb.a.gosのこともますます大好きに。自分で人生のハンドルをしっかり握って離さないこと。自分を信じ、自分で選択すること、そして自分自身で気づくことが大切なのだと、力強いエールをもらったような気持ちです。そしてなにより、「好き」という想いをこだわり抜き、困難なことでもしつこくやり続けるその熱量に圧倒されました。それを自分ひとりではなく、家族や仲間たちと一緒につくってきたこと。「ひとはつながりがあるから生きていける」という言葉。そのあたたかい人間性とブレない生きかたは、これからもわたしたちの憧れです。

Interview:Yoko Shinhara(SANPO CREATE)
Text:TEEMA, INC.(Yoko Okazaki・Yumi Iwasaki)
Photos:Satoru Nakano
Design:MATO INC.

INTERVIEWEE

曽我部 美加さん | eb.a.gos

文化服装学院卒業後、アパレル会社、企画会社にてデザインを担当。1997年に独立し、ひとりで「eb.a.gos」をスタート。2017年に20 周年という節目を迎え、これまでのアーカイヴとして限定版書籍『バッグ ヲ ツクル』を刊行。帽子をバッグに仕立てた「ボウシ」シリーズ、旅先で出会った民族衣装をリメイクした「アンティーク」シリーズ、紅藤やブライドルレザーなどの厳選した素材で丁寧につくりあげたカゴバッグなど、そのユニークな発想とものづくりに対する細部へのこだわりに裏付けられたアイテムの数々は長年ファンに愛され続けている。

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