百色日記 百色日記 SANPO

百色なひと File.01 [1/2] 2018.03.15

手しごとと ともにある暮らし 前編

楓美さん │ モデル・手芸家

転機となった27歳

―モデルのお仕事はいつから?

スカウトがきっかけで、高校3年の終わりにモデルとしてのキャリアをスタートしました。雑誌や広告を中心に活動し、27歳の時、所属事務所を離れ、独立しました。独立した理由は、ひとつには子どもの頃から好きだった手芸に本格的に取り組みたかったからです。もちろん、事務所で活動することには安心感がありましたし、仕事も楽しかったです。だけど、それ以上に、シンプルに、体ひとつで挑戦してみたい」という気持ちが勝ったのかなと思います。
もうひとつは、丁寧な暮らしを自分の手で作っていきたいと考えるようになったからです。振り返ってみると、独立する3年前、2011年の東日本大震災の頃から、少しずつ「暮らすこと」そのものに向き合うようになったのだと思います。震災をきっかけに、当時ひとり暮らしをしていた東京を離れ、埼玉の実家に戻ったのですが、緑豊かな自然に囲まれて暮らす中で、ああ、わたしはこういう場所が肌に合っているんだ、と思って。10代の頃は、東京での暮らしに憧れていたけれど、ふと立ち止まってみると、やっぱりこっちだったんだなあって。
今思えば、27歳は人生の大きな転機でした。その年に今の夫と出会い、翌年に結婚、高松への移住、さらに出産と続いて…。仕事、生活、ライフステージ、と人生が大きく動きだしたタイミングでしたね。

チャンスを逃さない直感力

―パートナーである川上洋平さんとの出会いは?

「murmur magazine」編集長の服部みれいさんの結婚パーティを兼ねたフェスがきっかけでした。そこに洋平さんが「SAKE TO BOOKS」(※)というゲストに合わせて本を選ぶサービスの出展者として参加していて。このイベントには、いろんな方がお店を出していたり、イベントもあったり、ゲストたちが楽しめる企画がたくさんあったんですよね。その中に、独身ゲストの出会いのための「お見合いパーティ」もあって(笑)私は人見知りをするほうなので、最初は躊躇したのですが、思い切って「今、ひとりなので参加します!」って周りの人にも宣言するようにしたんです。先に言ってしまったほうが恥ずかしくないかなと思って。

―思い切りましたね(笑)

そうですね(笑)自分のことを初対面の人とうまく話せないタイプだと思っていたけれど、これはチャンスだと思って、思い切ってみたのが良かったみたいです。洋平さんは共通の知人から紹介されていたこともあって声をかけやすく、自然と会話も弾んで。
思い切ったと言えば、高松移住を決めたときも(笑)高松は洋平さんと旅行で訪れた場所で、その時に地元の方に物件を紹介いただいて、試しに見に行ってみたらとても気に入ってしまって。のどかな田園風景が地元の風景に重なって、「あ、ここに住みたい」って即決。まだ2人で暮らす計画さえ立てていなかったのに、決めてしまいました(笑)

―すごい。ビビッときたんですか?

はい。私は直感を信じてるんです。もちろん大事な選択をするときは人に相談しますし、今も子育てのことは洋平さんと2人で悩んで決めることも多いですが、昔からほとんどのことは自分で決めてきたように思います。親が「こうしなさい」「ああしなさい」と言わないタイプだったんです。習い事もやりたいことをやらせてくれたし、「あ、これはわたし、才能ないな」と気づいたら、自分で辞めると決めて(笑)
モデルをやることも、一人暮らしをすることも自分で決めさせてもらいました。「決断する」ことが自然と身についているのかもしれませんね。娘、息子にもやりたいようにやらせてあげたい。自分で悩んで決断できる人になって欲しいと思います。

(※)book pick orchestraの主催するひとりひとり話を聞きながら、その人に合った本を選んでくれる選書サービス。book pick orchestraは本のある生活をふやすために、新たな本のあり方を模索し、人と本が出会う素敵な偶然をつくるユニット。図書館や文学館、美術館での本の企画・選書・ワークショップをはじめ、益子STARNET、新宿HAPONなどギャラリーやシェアオフィス、カフェでのブックコーナーの担当、オリジナル商品「文庫本葉書」、「文庫本画廊」の販売など、本を選書するだけに留まらず、さまざまな場所で人が本と出会う体験をデザイン・企画している。
http://www.bookpickorchestra.com/

INTERVIEWEE

楓美 fumi | モデル・手芸家

1987.5.30生まれ(双子座・B型)

雑誌、広告でのモデル活動のかたわら、手芸家としても活躍。麻糸やコットン糸を用いたかぎ針アクセサリーや小物をはじめ、旅先で見つけた生地を用いた布小物などを制作。著作に『楓美のかぎ針で編む、かわいいもの』(2009.9.28 発売) 家族で香川県高松市に移住し、娘と息子を育てながら暮らしている。

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