百色日記 百色日記 SANPO

百色なもの File.01 2018.03.15

姉妹がつくる
愛のつまった焼きたてパン

幸手のパン屋 │ cimai(シマイ)

こんなところにおしゃれなパン屋さん?

埼玉県幸手市にあるパン屋さん「cimai」(シマイ)。典型的な郊外のノッペリとした自動車道を行くと角食パンのようなキューブ型の小さな白いお店が見えてきます。目立つ看板が無いので、あやうく素通りしそうになるけれど、気付いて目をとめてみると、その場所だけ不思議と空気が違うんです。凪の海のようにおだやかで、それでいて太陽のような力強さのある空気をまとっている、とでも言いましょうか。パンの香りとともに、パン作りの活気がお店の外まであふれ出てくるような、そんな場所。お店のオープンはお昼の12時。 開店と同時に、続々とお客さんがやってきます。赤ちゃんを連れたお母さん、ご年配の夫婦、女性同士のグループ…。店内は決して広くないため、お店に入りきれないお客さんは外で待つことに。そして順番を待つ間、ガラス窓から店内の焼きたてパンたちをワクワクしながら、覗きこみます。こんなシーン、小さい頃に読んでもらった絵本になかったかしら?

イースト派はお昼に、天然酵母派は夕方に来るべし

ちなみにこの日の12時過ぎに店頭に並んだパンは、マフィン各種(玄米マフィン、チョコマフィンなど)、野菜のキッシュ、あんバターサンド、りんごパイ、レーズンblancなど。待っている間にも焼きたてパンがどんどん追加で並びます。
実はこの焼き上がり時間に「cimai」の秘密が。開店の12時~イーストで作ったパン、夕方16:30頃~天然酵母で作ったパンが並ぶのです。つまり、先ほど紹介したパンたちはどれもイーストで作られたものだということ。ちなみにこの日の天然酵母パンのラインナップは、カンパーニュ、黒糖くるみ、いちじくぱん、かぼちゃのメロンパンなどでした。
こんな風にイーストと天然酵母、どちらのパンも出すハイブリット型のパン屋さんはとっても珍しいですよね。ひとつの店舗で2つのお店のパンが楽しめちゃうような、そんなスタイル。これが実現できるのはイースト、天然酵母、それぞれを得意とするふたりのパン職人がいるから。
イーストを担当するのは三浦有紀子さん。カフェ、ベーカリーでの勤務、友人とフードイベントに出店するなどの経験を経て、姉、大久保真紀子さんともに2008年「cimai」をオープンします。真紀子さんは会社勤め、カフェ勤務を経て、代々木上原の名店「ルヴァン」で修業。「cimai」では天然酵母のパンを担当しています。
そうなんです。おふたりは、姉妹。だからお店の名前が「cimai」なんです。なんてキュートでセンスの良いネーミング!

ハイセンスなのはパンだけじゃない!

そのセンスの良さは店内のインテリアを見ても納得。アンティークの木製テーブル、ファクトリーライクなライト、昔学校に置いてあったような味のある時計や空間のアクセントになる小物たちから、イートインで使われるお皿やカトラリーに至るまで、ひとつひとつこだわって選ばれていることが一目でわかる逸品たちがお店の心地よい世界観をつくりあげています。
その中でもとくに目を引くのが主役であるパンのためのディスプレイ。一般的なパン屋さんのように大きな棚にたくさんのパンをめいっぱい陳列するのではなく、木製の大皿や籠皿の中央に3~4つずつ、大切に並べられているのです。まるで命が宿っているかのように、愛情を注がれて並ぶパンたち。パンマニアでなくても思わずキュンとしてしまう光景です。
この「cimai」の愛のこもったていねいなまなざしはパンだけではなく、「暮らし」そのものにも向けられます。実はお店の2Fは「cimai」の運営する「shure」というギャラリースペース。ここでは期間限定の出張カフェがやってきたり、お菓子教室やヨガ教室が開催されたりと、パンの周りに広がる「暮らし」をより豊かに、ていねいに、楽しむための文化発信地になっているのです。
ハイセンスなベーカリーであり、町で人気のパン屋さんであり、豊かな文化の発信地でもある「cimai」。ぜひ、一度訪れてみてください。

最後に、わたしが購入したパン(の一部)のレビューを。

あんバター(イースト)

コッペパンにあんことバターをサンド。って、おいしくないわけがないのですが、一口食べたとたん、その予想をさらに上回るおいしさに、思わずパンを二度見。ほどよい甘さのあんに、薄くカットされたバターの塩気とコク、そこにイーストパンの王道、素朴で味わい深いコッペパンが合わさり、これはもう至福以外の何物でもありません。ゆっくり味わいたいのに、気づいたら食べ終わっていたという、食欲をこれでもかと刺激する恐ろしい一品です。

黒糖くるみ(天然酵母)

事前にパンマニアの友人からイチオシと聞いていたパン。とにかく味わい深いのです。黒糖って甘味の主張が強烈なものだと思っていたけれど、このパンの黒糖は別物。軽やかな甘さに、さわやかな香り。天然酵母パン特有の酸味とのバランスが絶妙です。さらにくるみが食感に楽しい変化を与え、かみしめるたびにこのままずっと口の中にいて欲しいと願わずにはいられません。どこかに寄り道しても、結局いつもここに帰ってくる、そんな故郷のようなパン。これをデイリーに買いに来られる幸手市民がうらやましい!

早起きしてでも行く価値の十分にある名店ですが、
それでもさすがにお店まで足を運ぶのは難しいな、という方は関東を中心にイベント出店もされているようですので、お店のHPでチェックしてみて。
また、一部の商品はオンライン販売もあります。
大切な人への、あるいは自分への贈りものにも、ぜひ。

PLACE

cimai (シマイ)

埼玉県幸手市大字幸手2058-1-2
0480-44-2576
東武日光線幸手駅より徒歩25分
駅前にタクシーあり

営業日(不定休)、パンの焼きあがり時間など
事前にHPで確認してからの訪問をおすすめします

http://www.cimai.info/

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