百色日記 百色日記 SANPO

百色なひと File.03 [2/2] 2018.03.30

「嫌い」を知らないと、「好き」は見えてこない 後編

REMAHさん │ シンガー/アーティスト

違う価値観に寄り添ってみる

―日本との違いは感じた?

海外はなんでも「乗せ上手」。徹底的に褒めて伸ばす。褒められると「もっとできる、だからもっとやってみよう」と力が沸いてくる。自分の可能性の扉がどんどん開いていくようなイメージです。でも、日本では歌った後に「今のは30点ね」と言われたりする。減点評価な現場や教育が多い様に感じました。海外を拠点に音楽制作をしていたけれど、契約したのは日本の会社だったので、日本的なシステムに合わせないといけなくて。否定から入るスタイルも私には合わないし、否定の根拠に納得が出来ない時ははっきりと「なんでなんですか?」と言ってしまう性分なので、反抗的に見られて苦しい時もありましたね。

―どんなところが納得できなかった?

「売れるためにああしなさい」「芸能界だからこうしなさい」「流行の髪型やファッションにしなさい」と言われるたびに「なんで?」って思ってしまって。すでに他で成功しているやり方にただ乗っかるなんて、アイデンティティもオリジナリティもないし、文化的でもないですよね。だからすごく不満だったけど、その当時は若かったので悔しさ半分、全部言われたとおりにやってみたんです。やってみないうちには相手の言う言葉や価値観の本質を見極められないから。それで、、、やってみて思った。なにも残らないって。やっぱり違うんじゃないかって。作品も、結果も残らなかったから。

嫌いなものが人生を豊かに

―今は自分自身の価値判断でやっている?

今でも、誰かの価値観と寄り添ってみることはありますよ。そうしないとそのものの本質がわからないから。寄り添ってみると、自分にとってのアレルギー源がわかります。私の場合は「かわいさ」や「若さ」という外観的な旬を売ることが肌に合わないんです。だから自分にとって心地いいもので揃えたこのお店には旬なものはなくて、古いものがたくさんあるでしょ(笑)ドライフラワー、ユーズドな家具、古着も大好きですね。世間一般の好き嫌いに合わせるのではなくてどこからどう見ても「自分はこうだ」と思う第一印象を、たとえばヘアスタイルやファッションで示しておけば、それを見て「これじゃない」「理解出来ない」と思った人は自然と遠ざかっていく。これなら、お互い不幸な勘違いをしなくて済むでしょ?そのほうが合理的かなって。

―でも人が去っていくのって怖くないですか?

自分らしく生きている中で出逢って、それで去って行く人はどちらにせよ去っていきます(笑) みんなに好かれようなんて無理ですから。「嫌だな…」「もう最悪!」って感じることも経験のうちだと考えてみるといいのかも。嫌いなものを知らないと、好きなものって見えてこないと思うんですよね。だから、20代や30代前半はとくに、いろいろな価値観にまみれて揉まれて、自分の大好きなことはもちろん、自分の大嫌いなこともいっぱい経験したほうがいいんじゃないかな。「嫌いなものがあるからこそ、人生が豊かになる」そんな風に考えてみたら、嫌な想いをすることもポジティブに受け止められると思いませんか?自分にとって大好きなもの、大切にしなきゃいけないものって、意外と簡単に見えなくなることがあって。「あれもこれも」って頭の中がいっぱいになっていると思考が停止してしまうんですよ。そんなときに、嫌いなものを知ることは、いっぱいになっている頭の中を整理するために、何を捨てればいいかを決めるヒントになるんじゃないかな。

リアルな空間で愛や感動を共有したい

―ショーをやるきっかけは?

当時お世話になっていたプロダクションの社長が契約が終わる間際に「手伝うから、最後に自分でやりたいことをやってみなさい」と言ってくれて、それならばということでセルフプロデュースで一晩限りのショーをやろうと思ったのが、上質でアバンギャルドなエンターテイメントショー「MAIN DISH」の始まりです。でも、いざ作りはじめると、はじめてのことだらけで大変。とくにプロデュース業は難しくて。興行として成功するように、演者、歌い手、スポンサーもろもろを集めることから始めて、とにかくあちこち走り回り頭を下げました。おかげ様でお客様にも恵まれ、席がガラガラで大失敗というのはなかったけど、初回は公演を作るという制作の意味では大失敗だったと今では反省しています。

―ショーのクリエーションの源は?

基本的にお客さん自身の持っているイマジネーションを使ってショーを作っています。食事で例えるなら、食べたことないものを食べさせるのではなくて、誰もが食べたことのあるりんごを「こんな風にも味わえるんだ!」という驚きを提供したい。であれば、子どもも大人もみんなわかるでしょ?お客さんの持っているイマジネーションを使うことで、感動が共有できるんです。「MAIN DISH」で目指すのは、みんなのイマジネーションの世界をベースに、私たちらしい濃度・くせ感を保ちつつ、来てくれたお客さん全員に喜んでもらうこと。今後は食育とエンターテイメントを織り交ぜて「MAIN DISH」の公演をより進化させながら、変化を楽しみながら続けていきます。ぜひ、一度遊びに来てくださいね。

 

INTERVIEWEE

REMAH(レマ) | シンガー/アーティスト

10代より、ピーボ・ブライソンのデュエットパートナーとして共演をはじめ、ビョーク本人の承諾を得て、日本国内で再度ラッセル・マクナマラとの共作楽曲をリリースするなど、様々な海外クリエイターとの楽曲制作やライブ活動を経験。2013年より自身がプロデュースするエンターテインメントショーをスタート。2016年より地元神戸に拠点を移し、元町にセレクトアトリエSHOP「Atelier Rojoart」をオープン。2017年に1stアルバム『MAIN DISH』リリース、2018年もショーを東京・神戸等で公演。

Official site:http://remah.jp
Instagram:@remahntica
[Atelier Rojoart] Instagram:@maindish.official

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