百色日記 百色日記 SANPO

百色なひと File.09 [2/3] 2019.05.22

「好き」を信じて、つながる、生きる 中編

曽我部 美加さん │ eb.a.gos

自分らしい人生を積み重ね、それぞれの色で花咲く女性たちを訪ねるシリーズ「百色なひと」。今回は徹底したこだわりと、たっぷりの愛情が詰め込まれたバッグを生み出し続ける「eb.a.gos」(エバゴス)の曽我部 美加さんを訪ねます。前編では、ものづくりへの情熱や、ひととの「つながり」に対する想いを伺いました。続く中編では、曽我部さんの人生やライフスタイルを通じて、曽我部さん≒eb.a.gosの価値観に迫ります。

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聞き手:新原 陽子 (SANPO CREATE/百色日記編集部)

大失敗が気づかせてくれたこと

―ずっと順風満帆というわけではなかった?

わたし、学校卒業して就職したアパレル会社でファッションブランドの立ち上げを任せられて、大失敗しているんですよ。つくっていたのがめちゃくちゃ派手でサイケな服で。社長に「この服の売りかたがわからない」って言われて、「私もわかんないんです」って(苦笑)。

 

―なんだか、意外です。

失敗して落ち込んだけれど、次の企画会社ではデザインしたバッグが売れたんですよね。流れに乗るとみんな喜んでくれるし、喜んでくれると自分も嬉しい。そういう実感を得たのはこの時かな。最初に失敗した経験からの学びはとにかくやってみること。ダメならダメ。今でも「やってみないとわからない」というスタンスは今も大事にしています。

 

仕事ともパートナーとも関係は対等

―もともとポジティブですか?

基本はネガティブなんですけれど(苦笑)実は、いつも自信はないんですよ。悩んでばかりで。でも仕事に対して不満を抱いたことはないですね。不安だけれど、不満はない。仕事って誰かに「選ばれて」いるけど、自分自身が「選んで」もいるでしょ。フィフティ/フィフティの関係だから、そこに不満は生まれようがない。

 

―そんな風に考えたら、仕事が楽しくなりそうです。

楽しいですよ。でも、こうやって楽しめるのは相棒(夫)の存在も大きくて。私が用意するご飯がどんなにヒドくても、家にホコリが舞っていても(笑)、彼は協力してくれるから。私はとても恵まれているなとつくづく思います。

 

―素敵なパートナーシップですね。

私はすぐ家に引きこもりたくなっちゃうんですよ。スーパーへ行くのもイヤだし、料理するのもイヤ。そういう時は彼がやってくれます。彼はそれを「業務」って言いますけどね(笑)だからすごく対等な関係かなと。そうそう、彼はパラグライダーツアーの企画を仕事にしていたから、私もパラグライダーで飛んでいたりしたんですよ。

 

―すごい。どんな景色が見えますか?

人生が変わりますよ。初めて飛んだのは30代前半だったかな、上空から見る景色に衝撃を受けて。急に世界がポンと変わったような。目の前に一切のフィルターが無い世界。一気に心が解放されたような気がして。今でも空がすごく好きです。

 

自由に、湧き出る直感を信じて

―パラグライダーに限らず、新しいことにチャレンジするのが好き?

わたしは「やるぞ!」って体の中から湧き出るような直感を信じるタイプ。たとえばeb.a.gos初の書籍『バッグ ヲ ツクル』も、実は構想としては7、8年間頭の中にあったけれど、その直感が出てくるまで待ったんです。直感が湧き出るときは勝手にグツグツと出てくるもの。だから、それを待つんです。

 

―焦らず、直感をじっと待てるのがすごいです。

今思えば、子どもの頃から何かを「やらされる」ことがほとんどなくて。両親はわたしに「ああしろ、こうしろ」と言わずになんでも自由にやらせてくれて、あまり怒られたこともないんですよね。うちでの子育てもそう。子どもが部屋を散らかしていても、なにも言わない。でもなにも教えていなくても、いつの間にか洗濯も片付けもできるようになっているんですよね。無理に「教育しよう」とか意気込まなくても、人間って不思議とそういう風にできているんじゃないかな。

 

子育ても「今、そのとき」を楽しむ

―仕事と子育ての両立に悩んでいるひとは多いですよね。

わたしの場合はどうだろう…、大変だったかな?(笑)時間が経つと忘れちゃいますね。ただ、確かなのは毎日限られた時間でも、娘との時間がとても楽しみだったこと。子どもがいることを周りがよく理解してくれていたこともあったし、子どもがいると時間の制限がある分、かえって時間の管理がしやすくなるんですよ。だから、子どもがいながら働くのは結果的にすごく良かったと思っています。

 

―限られた時間だからこそ、子どものことがいっそうかわいく思えたり?

そうそう、余計に。子どもにしてみたら親に会えない寂しさ半分、一緒に過ごすときの嬉しさ半分だけど、でも、それでいいんじゃないかな。

 

―子育て中、心配ごとはなかったですか?

もちろん、ありましたよ。でも子どもと一緒に過ごす時間が長くないぶん、1年に1度は家族旅行をするとか、そのとき、その状況を楽しんでいました。私も旦那も「子どもが大きな壁にぶつかったときは思うようにさせたい」という考えかた。悩みごともきっとどうにかなるから、「今」を楽しんだほうがいい、楽しむしかないんじゃないかな。

Interview:Yoko Shinhara(SANPO CREATE)
Text:TEEMA, INC.(Yoko Okazaki・Yumi Iwasaki)
Photos:Satoru Nakano
Design:MATO INC.

INTERVIEWEE

曽我部 美加さん | eb.a.gos

文化服装学院卒業後、アパレル会社、企画会社にてデザインを担当。1997年に独立し、ひとりで「eb.a.gos」をスタート。2017年に20 周年という節目を迎え、これまでのアーカイヴとして限定版書籍『バッグ ヲ ツクル』を刊行。帽子をバッグに仕立てた「ボウシ」シリーズ、旅先で出会った民族衣装をリメイクした「アンティーク」シリーズ、紅藤やブライドルレザーなどの厳選した素材で丁寧につくりあげたカゴバッグなど、そのユニークな発想とものづくりに対する細部へのこだわりに裏付けられたアイテムの数々は長年ファンに愛され続けている。

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